教室の運営方針

医学教育の科学と実践と政策を行き来する

社会医学の一分野としての医学教育学

医学教育学という学問分野がまだ黎明期にあることもあって、当教室では、リサーチミーティングを毎週開催しています。自身の医学教育の実践を省察し、分析する中で、実践者の視点だけでは見えなかった景色を見ることができるようになってもらいたいと考えています。

医学教育学分野の学術誌はこの10年で随分と増えてきました。学術誌への論文の投稿は研究者の重要な仕事の一つですが、業績を積むことが目的化しないように気をつけたいとも思っています。上記と重なりますが、実践と理論とを往復する中で、これまでに見えたなかった世界を見て、自分自身の言葉で語れるようになることを、研究室の構成員には期待しています。

社会全体でグローバル化が進んでいること、また米国・英国・カナダ・オランダなどの国でこの分野の研究者の層が厚いこともあって、海外の研究者との交流も積極的に推進しています。日本では当然と思われている、でも海外ではユニークなことを見つけて「英訳」する研究は、今後教室全体としても進めていきたいと思っています。

医師免許を持っておられる方には臨床を続けるように強く推奨しています。研究と臨床を両方やると中途半端になるという批判もありますが、医学教育学が机上の空論にならないためには、一人の臨床医として現場に立ち続けることが、良い研究者になる上でも重要だと考えています。

医学教育に関する政策立案にも有識者として責任ある行動をとることを求めています。科学と政策の距離感については、マックス・ウェーバーの頃からの議論がありますが、コロナ禍でもその難しさが露呈しました。批判をされる側に回ること、そしてその責任を引き受けることを大事にしたいと思っています。